精神科医の権威である中井久夫氏はたびたび授業で登場しますし、私が手に取る本にもかなりの頻度でかかわっています。
今回はいじめの三段階論をご紹介します。
①孤立化 → ②無力化 → ③透明化
このようにいじめは深刻化していくわけです。
①孤立化とは、文字通り一人ぼっちの状態を作ること。仲間外れといったあからさまな状態になる手前に、ターゲットを決めてからかうことや言いがかりをつけることから始まります。
小学生なら、髪の毛が長い男の子、ランドセルの色が違う子、眼鏡をかけている、体操服がおさがりでデザインが違う、流行っている文房具を持っていない など
理由は些細なものでも、一人対その他大勢にするには十分な理由です。
②無力化
ターゲットから仲間を奪います。反論する余地や相手が仲間を作る余地を与えない。エスカレートすると攻撃します。ここで本人もはっきりといじめを理解します。
周りでも多くの人が気づくでしょう。でも、自分もいじめられたら嫌だなという思いが先行して、気にはなりますが何もしません。
本人はまだ「誰かがわかってくれる、それまでは耐えよう。我慢しよう」って思えます。
③透明化
しかし、見て見ぬふりの傍観者が増えると、ついにはだれも見向きもしません。いないものとして、存在しないものとして完全スルーになります。
本人は無抵抗になります。学校にも来なくなるでしょう。
加害者も反応がない相手には手を出さなくなりますし、学校に来なくなったとしてもなんとも思いません。次のターゲットを探すようになります。
こうして、きづけば過ぎ去っていき、いじめがなかったという結論になることもありえるわけです。
生徒児童で自殺した子の理由がいじめであることは5%程度との統計があり驚きましたが、いじめによって自殺につながる可能性は高いですし、死に至らないまでも生きることに対して後ろ向きにはなるでしょう。
いじめにも段階(ステージ)があって、早期発見早期介入で自殺はもちろん、その後の学校生活も改善できるのだと認識させられました。
理想は現場の人間が声を上げることですが、子どもであれば難しいです。担任や保護者が異変に気付いたときに、表面的な言葉だけを信用せず、早期介入して関係を断ち切る支援が必要です。