143日目 風の電話

グリーフケアという言葉を2か月ほど前の授業で初めて聞きました。

遺族となって悲しんでいる人へのケアという意味ですが、高齢となって配偶者に先に旅立たれて残された方の支援をイメージしていました。

タイミング的にも大山のぶよさんの記事を書いているくらいの時期でしたので。

そのグリーフケアというサブタイトルに惹かれ手に取った本ですが、東日本大震災で残された遺族のための電話が「風の電話」として三陸にあると。

日本中のみならず、海外からも生前伝えられなかった言葉を、旅立たれた人に向けて電話で伝えに来られるそうです。

この電話ボックスを思いつき、形にした佐々木格さん夫妻のアイデアと行動力は、震災を経験し多くの遺族の方々と触れ合ってきたからこそだと思います。

訪れてみたいと思いましたが、誰に何を伝えればいいのか。

ふと頭に浮かんだのは、遺族という言葉の範囲の広さです。難病で幼くして子供を亡くした親も、事件や事故で不幸に巻き込まれた家族も、車に放置されてなくなってしまった子の親族も、生まれる前に命尽きてしまった子の母も、遺族ですよね。

私も妹を亡くしていますが、墓前で話すことができます。やはり、震災で亡くなり遺体すら見つからなかったご遺族にとって、語り掛けができるのが風の電話なのでしょう。

文中には、生存している母親に直接伝えられなくて、風の電話に思いを伝えた方の話がありました。

面と向かって言えないからわざわざ不便な三陸鯨山に足を運んだそうです。

グリーフケアというところに話を戻すと、愛する家族を失った悲しみを癒すには、まずなくなったことを受け入れなければなりません。

「嘘だ、ありえない」と頭を抱えるシーンはドラマや漫画で見かけたことがあるのではないでしょうか。多くの人は愛する人の死を受け入れられず【否認】します。

次に「〇〇のせいでこんなことになったんだ」と【怒り】がわいてきます。事故や事件であれば犯人に対し怒り、それ以外では「私のせいで」と自分に対して怒ります。

怒りが収まると「代わりに私がそっちに行くので愛する人を返してください」と【取引】するようになります。生き返るならなんでもしますと投げやりになることもあります。

しかし、かなうはずもなく【抑うつ】状態になり、何をするにも無気力になります。自分だけこの世に残って生活をするのがばからしくなるのです。

ゆっくりと時間をかけて、「自分は生かされている、生き残っているのだからもっと行きたかった愛する人の分まで生きなきゃ」と気持ちのどん底を抜ける時が来ます。そこから次第に死というものを【受容】できるようになっていきます。

否認から受容までの5つのステップを経て、悲しみを支えていく過程をグリーフケアといい、心理士など専門家の力を借りていく方法が進められています。

相談援助職として、さまざまな境遇の人の支援をする機会がありますが、一人一人に寄り添える精神保健福祉士でありたいです。

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