最近よく話題に出てくる社会的入院。
精神障害者の方が退院できる状態にあるにもかかわらず、社会的な受け皿が整っていないため入院を続けている状況を言います。
実態としては、①家族が退院を拒む、②病院が病床埋めるために退院を引き延ばす、③本人が居心地良くて退院を拒む、④身寄りがなくて行き先がない、⑤住居が見つからない
①は退院促進のページでも書きましたが、いつ何が起こるかわからない精神障害者を見るのは家族にとっても負担なので受け入れない
②は病院の利益確保、③は施設症と言って、入院が長くなると楽なんてますよね。3食出ますし、仲間もいる。わざわざリスク背負って退院できませんよね。
④は切実ですね。ソーシャルワーカーがグループホームなり地域支援なりと繋げないといけません。
⑤も実際多い問題です。精神障害者に家は貸してくれないんです。公営住宅は空き待ちが多いですし、田舎の空き家を勧められても④になりますし。
本日の授業では、このような現実の中で退院を促し地域生活に適応してもらうために何ができるのか、理想論を議論しました。
①地域の魅力を伝えるために、さまざまな体験プログラムを用意する
②病院を小さな街(コミュニティ)化して、買い物やサークル活動を通じて社会に出る準備をする
③デイケアやピアグループなどと連携して少しずつ適応していく
などの意見が出た中で、私たちは循環型地域生活というシステムを考えました。
そもそも症状が良くなっているのに退院しないのがおかしいのであって、骨折や糖尿病でもある程度治れば退院させられます。
精神科であっても、寛解し医者の許可が出れば退院すべきなのです。
ただ、何年も入院してきた方は病院に慣れてしまって、一人で生活することに不安もあるでしょうし、家族も受け入れに不安があります。
そこで、地域のグループホームや生活訓練施設などの居宅施設と提携し、退院後は集団でそれらの提携先に移住します。行き先は本人の希望に沿います。
集団というところがポイントで、1人じゃ不安なので、毎月初日に病院を卒業したみんなで移動するんです。病院で知り合った仲間がいるので不安は軽減されます。
そこで1〜2年くらいかけて、病院ではない拠点での社会生活能力を磨き、デイケアや就労移行訓練などを利用しながら家族暮らしや一人暮らしにむけて準備します。
家族がいれば、家族のタイミングに合わせて帰宅し、身寄りがない場合は一人暮らしや少人数でのシェアハウス等に移りますが、就労移行や就労継続、デイケアや地域活動支援センターなどの利用は続けます。
病院を中学校に例えると、寛解して退院許可が出ると翌月に卒業し、入居型施設という高校に入学する。そこを卒業すると一人暮らしの大学生のように仕事を探して、目指すは就職という流れです。
もちろん、一方通行ではなく症状が悪化すれば一つ前に戻る選択肢もあります。
病院側からみると、毎月ごっそり患者が減ると経営的にも困るかもしれません。
地域の精神科クリニックや養護学校、放課後等デイサービスや就労支援施設と連携して、治療や入院が必要な精神障害者をいつでも診れる体制を整えておくことができます。
いざ入院しなければならない時でも、連携が取れているので、病院をたらい回しにされることなく、スムーズに進められるメリットがあります。
こうして、入院の必要のない患者を卒院させ地域へと戻し、地域で入院が必要な患者を新たに迎え入れるという循環が生まれます。
循環型地域生活支援(仮)いかがでしょう?